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「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」ト長調K525 (モーツァルト)
モーツァルトの「セレナード」のうちでは、最も親しまれているこの曲が、どういう事情のもとに誰から頼まれて作曲したのかは、別に決め手を持たない現在、明らかにすることはできないが、歌劇「フィガロの結婚」のプラーグにおける大成功にすっかり気を良くしたモーツァルトが、同地の歌劇団から続いて秋のシーズンに上演するために依頼された歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の作曲に着手しつつあったその夏に、ウィーンでかかれたことは、手稿によって証明されている。この手稿には、同年8月10日の作であることが彼の筆で記されているが、一部の研究家はこれを否定している。しかし、プラーグからウィーンヘ帰り、また、出かけるまでの間に作曲されたものであることは疑いない。
また、この曲を何故に〈アイネ・クライネ・ナハトムジーク〉と名付けたかも詳らかではないが、「ナハトムジーク(ドイツ語の、夜曲).としては小さい作品(楽章数や使用楽器からみて)であることを意味するのであろう。
ここで問題となるのは、この曲が最初弦楽合奏を目当てとしたものか、それとも弦楽五重奏で奏かれるように書いたものかが、譜面の上では明らかにされていない。これは、単に器楽編成だけではなく、他の「セレナード」に比べてよくまとめられているし、「野外音楽」としてのセレナードの響きの面からは、はるかに弦楽合奏が相応しい。
第1楽章アレグロはソナタ形式で、力強く明るい第1主題と優美に流れるように歌われる第2主題をもつ。
第2楽章「ロマンツェ」アンダンテは三部形式で抒情的な旋律をもつ。中間部は対位法的な処理がみられ、内声部が細かいリズムを刻む。
第3楽章メヌエット(アレグレット)は力強いリズムをもつ主部と、美しく流れるような旋律をもつトリオ部との対照が美しい。
第4楽章「ロンド」アレグロは、ロンドと記されているが、副主題は一つしかなく、しかも主要主題と似た性格をもっているために、明るく軽快な流れに終始している。

 

 

 

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